Regは膵臓再生にかかわる増殖因子として発見され、我々はRegが胃粘膜障害の再生時にも病変部周辺に強く発現することなど、胃粘膜増殖因子である可能性を示唆するデータを報告してきた。本研究ではこれをさらに進め、胃粘膜細胞内でのシグナル伝達や癌化との関連、in vivoにおける増殖促進作用を解析している。 本研究の前半の成果である胃癌細胞におけるRegの細胞内シグナル伝達および胃癌細胞における発現に関するデータをFEBS Lett.2002 530 p59-64に発表したが、この論文はSandvikらに高く評価され、コメントが同雑誌に掲載された(FEBS Lett.2003 553(3)P464-5)。 また、Regのin vivoにおける増殖促進作用を評価するためにサイトメガロウイルスプロモーターを持つ発現ベクターを用いてトランスジェニックマウスを作製したところ、このマウスの胃粘膜は、正常マウスに比べ2倍以上の厚さを示し、Regの胃粘膜幹細胞に対する増殖促進作用が示唆された。さらに、増殖促進された細胞は壁細胞、主細胞のみであることが示され、新たにRegの胃粘膜細胞分化作用が示された。この成果はoncogeneに投稿し、現在in pressの状態である。また、Regはマウスでは、胃では発現が弱く、小腸で発現が強いためトランスジェニックマウスでは胃で、ノックアウトマウスでは小腸での機能が強く形質として出ると予想される。Regノックアウトマウスの消化管の組織形態を検討したところ予想どおり、小腸において明らかに形態の差が見られた。ホモノックアウトマウスの小腸絨毛において、ワイルドタイプに比べ細胞密度が減少していた。この結果により、Regは胃のみならず、小腸などの消化管腺組織全般において、増殖因子として働いている可能性が示唆された。
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