研究概要 |
NASH(non-alcoholic steatohepatitis)の多くは、肥満に対する小腸バイパス手術や抗不整脈剤の合併症、抗エストロゲン剤による合併症として報告されてきた。しかし近年、病因の明らかでないNASHの増加が著しい。このような症例は肥満女性に多く、インスリン非依存性糖尿病を合併し易いなどの臨床像が明らかになるにつれて報告症例は増加し、今やC型慢性肝炎に次いで全米第三位の肝疾患である。本邦では未だ消化器の専門医の間でも本疾患の周知が不十分であるが、今後、疾患概念の浸透と共に症例数の急増が予想される。しかし、現在まで、どのようにして肝細胞傷害が生じ、線維化を伴うのか、その詳細は未だ明かでない。病態解析と治療法の確立を目的に,我々は糖尿病や肥満を呈することなしに、NASHを発症する近交系マウスを樹立した。preliminaryな検討からこのマウスでは3個の常染色体の関与する劣性遺伝様式によりNASHが発症することが明かになっているので、マイクロサテライト解析によりこれらの遺伝子座の特定を進めている。また、臨床例では高インスリン血症、高脂血症血症、鉄過剰などの関与が示唆されており、このNASHモデルマウスでも特殊な高脂血症が合併しており、この異常がNASH発症に関連するかどうかについても検討し、論文を投稿中である。
|