研究概要 |
近年の肥満人口の増加に伴い脂肪肝は人口の2-3割を占めるようになった。従来、脂肪肝は良性可逆性の疾患の代表と考えられ、疾病と見なされることはなかった。しかし、'98に非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の疾患概念が確立されると、本邦でも多数のNASH症例の存在が明らかとなった。本症は潜在的に肝炎、肝硬変、肝細胞癌へと進展することが知られており、早期治療が求められている。治療法の開発には、まず病態を解明することが不可欠と考え、われわれはNASHモデルマウスを作成した。preliminaryな検討からこのマウスでは3個の常染色体の関与する劣性遺伝様式によりNASHが発症することが明らかとなっている。そこで今回、マイクロサテライト解析によりこれらの遺伝子座の特定を試みた。また、臨床例ではNASHの発症や進展に高インスリン血症、高脂血症血症、鉄過剰などの病態が関与する可能性も示唆されている。tamoxifen誘発性NASHでは、PPAR-α刺激剤であるbezafibrateが脂肪性変化の改善に大きく寄与しうること(Lancet 353:1802,1998)を明らかにできたので、このマウスをbezafibrate用いて治療したところ、肝細胞障害は有意の改善を示した。このNASHモデルマウスでも特殊な高脂血症が合併しており、常染色体劣性の遺伝形式を示す。そこで、この異常がNASH発症に関連するかどうかについても検討したところ、bezafibrateにより高脂血症は明らかな改善を示したが、肝細胞障害の発生に直接的な関与を証明し得なかった。このような成績からNASH症例を観察すると約2割の症例で脂質代謝異常が存在することが明らかとなり、bezafibrate療法の可能性を検討中である。
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