研究課題
基盤研究(C)
日本における急性膵炎の有病数は年間約1万5千人であり、極めて予後の悪い重症急性膵炎患者は約2千人と推察され、うち約25%が死亡している。一方、Vasoactive intestinal polypeptide(VIP)受容体が単球等の免疫担当細胞に存在する事が判明しVIPの免疫応答および炎症反応への関与が示唆されている。しかし急性膵炎に対するVIPの作用の検討はない。本研究では、(1)VIPの治療効果の検討、(2)VIPの単球への関与、および(3)VIPの抗炎症作用機序解析を目的とし急性膵炎に対するVIPおよび2つの選択的VIP受容体アゴニスト(VPAC1およびVPAC2)の検討をした。1)VPAC1受容体アゴニストはマウス重症急性膵炎で血清アミラーゼ値を有意に低下したが、VPAC2アゴニストでは増加を認めた。組織学的にVIPおよびVPAC1アゴニストにて改善効果を認めたが、VPAC2アゴニストでは変化はなかった。VPAC1アゴニストはIL-6およびTNF-aを有意に低下した。以上より、VIPが形態学的および血清学的に膵炎進展を阻止する作用が示された。2)in vitroでは、VPAC1受容体およびVPAC2受容体のmRNAの単球での発現が認められた。LPS刺激下にてVIPは単球にのIL-6産生を低濃度にて抑制し、高濃度では増強する二相性を示した。VPAC1アゴニストはIL-6を濃度依存性に抑制し、VPAC2アゴニストでは濃度依存性の増強効果を認めた。TNF-aはVPAC1アゴニストのみが濃度依存性の抑制を示した。これよりVIPの膵炎進展阻止作用は主にVPAC1を介した単球での前炎症性サイトカイン産生抑制と考えられた。以上、VIP(主にVPAC1)が形態学的および血清学的に膵炎重症化進展を阻止し、その作用は主に単球でのサイトカイン産生抑制によるものであることを明らかにした(Pancreas 30(1):62-70,2005)。今後、急性膵炎の臨床面での治療薬として期待される。
すべて 2005 2004 2002
すべて 雑誌論文 (16件)
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