平成14年度研究においては、マウスデキストラン硫酸大腸炎モデルを用いてNF-κB活性化ならびにその下流に位置する炎症関連遺伝子の発現について検討し、NF-κB活性化抑制による大腸炎阻止効果について検証した。NF-κB活性化を抑制する薬剤については、電子スピン捕捉剤であるフェニルブチルニトロンや核内受容体PPAR-γリガンドであるピオグリタゾンに着目し、本モデルにおける有効性ならびに炎症関連遺伝子発現に対する著明な抑制作用を明らかとした。特に、ピオグリタゾンはデキストラン硫酸による大腸粘膜傷害、好中球浸潤を著明に抑制し、粘膜脂質過酸化反応をも抑制していた。さらに、ピオグリタゾン投与は大腸粘膜NF-κB活性化を著明に抑制し、炎症関連遺伝子であるケモカインKC、誘導型一酸化窒素合成酵素、インターフェロンγ、腫瘍壊死性因子α遺伝子発現を有意に抑制していた。核内受容体PPARγの局在についても免疫組織化学的に検討し、大腸粘膜間質細胞だけでなく上皮細胞にも発現が認められることを確認した。これらの結果より、PPAR-γは大腸炎治療の新たな標的分子となりうる可能性があることを明らかにした。また、NF-κB活性化機構の詳細を明らかにするため、腫瘍壊死因子α欠損マウスを用いて検討したが、その活性化には影響を与えず、大腸炎症はむしろ増悪する結果となった。免疫大腸炎モデルにおいてNF-κB-サイトカイン系の意義を検討するために、CD45^+CD45RB^<high>大腸炎ならびにTCR-α欠損マウス大腸炎における基礎検討を開始している。現在、GeneChipプローブアレイによる網羅的遺伝子解析の準備中である。
|