マウスデキストラン硫酸(DSS)大腸炎モデルを用いて転写因子NF-kBの関与について検討し、以下の成果を得た.(1)DSS投与後経時的に大腸粘膜NF-kBの活性をゲルシフトアッセイにより評価したが、経時的にNF-kB活性化を認めた.(2)NF-kB下流遺伝子である誘導型一酸化窒素合成酵素、向炎症性性サイトカイン遺伝子の発現も亢進していた.(3)これらNF-kBの活性化は大腸粘膜の炎症の程度と相関していた.(4)NF-kB阻害作用が証明されている各種薬剤(スピントラップ剤PBN、PPAR-γリガンドpioglitazone、抗酸化剤ビタミンE誘導体など)の有効性について検討し、NF-kB阻害による新たな治療戦略の可能性を示した.(5)NF-kB活性化における腫瘍壊死因子TNF-αの影響についてTNF-α欠損マウスを用いて検討したが、DSS投与後の大腸粘膜炎症は欠損マウスにおいて有意に増悪した.以上の結果は、マウス大腸炎モデルにおいてNF-kB活性化が炎症の成立、病態の悪化に関与していることを明らかにしたものと考えられる.今後新たな治療標的分子としてさらにその詳細を検討し、ヒト潰瘍性大腸炎に対する応用を考慮に入れ、実験を進める予定である.
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