研究概要 |
従来法では検出感度に問題があったB型肝炎ウイルスのlamivudine耐性株の高感度な検出法の開発を始めた.われわれは,近年,遺伝子治療の分野などで使われ始めている人工的な核酸化合物であるpeptide nucleic acid (PNA)に着目し,PNAを用いた新たなPCR法を試み,lamivudine耐性HBVを高感度に効率的にスクリーニングする方法を開発した(J Hepatol,2002). PNAはペプチド結合により配列された短い塩基対で,相補的なDNAやRNAに対してより強く結合し,DNAポリメラーゼや制限酵素などの反応を阻害する.そこで,野生株のHBVに特異的なPNAを合成しPCRを行うことで,lamivudine耐性HBVを選択的に増幅することが可能である.この方法により耐性HBVの検出感度を0.01-0.1%まで高めることが可能であった.さらに,このPNAによるPCR clampingとChayamaらのRFLP法を組み合わせることによりさらに1,000倍感度を上げることができた. この方法を用いて,lamivudine投与前の36例のB型慢性肝炎をスクリーニングし,4例ですでに投与前に耐性ウイルスが存在することを明らかにした.さらにlamivudine投与中の25例のB型慢性肝炎,10例の肝硬変での経過を観察し,従来法で検出されるより1年以上前から耐性ウイルスが出現することを明らかにした.
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