研究概要 |
B型慢性肝炎治療に使われるlamivudineに耐性を有するHBVを高感度に検出するため,peptide nucleic acid(PNA)を用いたPCR clampingとRFLP法を組み合わせて従来の10,000倍の感度で耐性ウイルスを検出する方法を開発した. この方法を用いて,i)耐性ウイルスがlamivudine投与前から存在する例のあること,ii)治療開始後6か月以内の早期に出現しうること,iii)一度出現した耐性ウイルスがlamivudine投与中に自然消失する例のあること,iv)lamivudineとinterferonを併用することにより耐性ウイルスの出現率を低下させられること,v)耐性ウイルスの出現は,慢性肝炎より肝硬変に高頻度に見られること,などを明らかにした. また,急性肝炎後の肝組織や慢性肝炎でのHBVの存在様式を検討し,一過性の感染後にHBV組み込みが存在することを,平成11年に50th AASLD,(Chicago, USA)にて発表したが,さらに,これらの組み込み配列をHBV-Alu PCRを用いてcloning,解析した結果を含めて,平成15年の54th AASLD (Boston, USA)で発表した.こうした発癌前のHBV組み込みは,Axin1,EYA3,BBXなど既知の細胞増殖に関連した遺伝子のほかに、functionのわかっていない未知の遺伝子の近傍にも認められることが判明した.これらのうち,Axin1と未知の遺伝子は,肝癌細胞株間において不均等な発現を認め,また,肝癌組織と対応する非癌部の間でも発現の差異が認められ,癌抑制遺伝子の性格を持つことが示唆された.
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