研究概要 |
生体内で遺伝子発現を自由に制御可能なRetro-Tet systemを用いて、マウス肝癌細胞に主要な血管新生因子であるVEGFとbFGFを同じ細胞に遺伝子導入し、細胞内において各々の遺伝子発現を制御して肝癌発育に及ぼす影響につき検討した。その結果、VEGF、bFGFを高発現させると、両因子共に腫瘍血管新生増加を伴って肝癌の発育速度を著明に増加させることを見いだした。またこの両者を共発現させると腫瘍増大は相乗的に増加し、両因子が協調して肝癌の発育に重要な役割を持つことを示した。その作用機序としては、bFGFによるVEGFの発現亢進が関与することを明らかにした。さらに臨床ですでに使用されているACE阻害剤のperindopril (PE)が臨床濃度に匹敵する低濃度においてVEGFの発現を阻害し、マウス肝癌発育を抑制することを報告した。さらに肝発癌に関しても、ラット内因性、外因性両発症モデルを用いて検討したところ、前癌病変であるGST-P陽性病変の発生を有意に抑制することを見いだした。また、将来の臨床応用を念頭に置き、PEと慢性肝疾患で広く使用されているinterferon (IFN)との併用効果について検討したところ、併用により非常に強い抗血管新生阻害作用に基づく肝癌抑制作用が認められることを見いだした。これらの結果は、Hepatology 35:834-842 2002,Journal of Hepatology 37:22-30 2002,Clinical Cancer Research 9:6038-6045,2003などに論文発表した。
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