1.アポトーシス肝細胞の血液凝固促進作用について (1)ヒト肝細胞癌(HepG2)に、Staurosporinを用いてアポトーシスを誘導した. (2)アポトーシス肝細胞の細胞表面にフォスファチジルセリンが表出されることをFITC-Annexin Vを用いた共焦点レーザー顕微鏡で確認した. (3)肝細胞に、活性化X因子、CaCl2、プロトロンビンを添加した後、生成したトロンビンを特異的合成発色基質(S-2238)により定量した.Staurosporin処理は容量依存性に肝細胞のトロンビン生成能を促進した. (4)Staurosporin処理による肝細胞のトロンビン生成促進作用は、Annexin Vの添加によりキャンセルされた. 以上の実験結果より、アポトーシス肝細胞がフォスファチジルセリンの表出を介して凝固促進効果を示すことが示された.したがって、血漿がDisse腔に流出して実質細胞に直接接するという解剖生理学的特殊性を有する肝臓においては、肝細胞のアポトーシスが血栓形成を惹起し循環障害による広汎肝細胞壊死を引き起こす可能性が示された. 2.肝細胞アポトーシスの制御について (1)アポトーシス促進性抗Fas抗体により誘導されるヒト肝癌細胞(HepG2)のアポトーシスを、プロスタグランディン受容体EP4アゴニスト(PGEP4A)が抑制し、インドメサシンが促進することを確認した. (2)PGEP4AがHepG2にBcl-xLを誘導することを蛋白レベル、mRNAレベルで確認した. (3)インドメサシンがHepG2のMcl-1合成を抑制することを示した. 以上より、PGEP4Aは直接肝細胞に抗アポトーシス蛋白を誘導することによりアポトーシスを抑制することが示された。
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