研究課題/領域番号 |
14570501
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
消化器内科学
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
武藤 弘行 自治医科大学, 医学部, 講師 (50322392)
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研究分担者 |
佐藤 貴一 自治医科大学, 医学部, 講師 (50275707)
菅野 健太郎 自治医科大学, 医学部, 教授 (60179116)
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研究期間 (年度) |
2002 – 2003
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キーワード | Cdx2 / 腸上皮化生 / トランスジェニックマウス / 吸収上皮細胞 / PCFS / Math1 / 腸管内分泌細胞 / 間質 |
研究概要 |
転写因子Cdx2は成人では正常の腸管粘膜上皮に発現しおり腸管粘膜の分化に重要な役割を演じていることが示されている。また、慢性胃炎の進展とともに起こる胃粘膜の病的な状態である腸上皮化生においてCdx2が発現していることが確認されている。このCdx2が胃粘膜の腸上皮化生の原因であるか否かを検討する目的でCdx2を胃粘膜に特異的に発現させるトランスジェニックマウスを作成した。このトランスジェニックマウスの胃粘膜は完全に腸型の粘膜上皮に変化した。このことによりCdx2が腸粘膜上皮の発生・分化に本質的な意味を持っていることを示すことに成功した。腸粘膜上皮は吸収上皮細胞、腸管内分泌細胞、杯細胞、パネート細胞から構成されている。組織学的にはこのうちパネート細胞を除く、吸収上皮細胞、腸管内分泌細胞、杯細胞が誘導されていた。さらに実際に、形態学上の吸収上皮細胞が腸管の基本的な機能である吸収と消化の機能を有することを検討した。2糖類分解酵素やペプチダーゼの活性がみられ、アミノ酸や糖の吸収も確認された。さらに胃に腸上皮化生粘膜を有するトランスジェニックマウスは小腸を広範に切除しても生存可能であり、腸上皮化生粘膜は形態のみならず小腸の機能も有することが確認された。また、腸管内分泌細胞は転写因子Math1の発現を介して誘導されていることも確認された。次にこの転写因子Cdx2による胃粘膜の腸型の粘膜への変化は粘膜上皮のみの変化であるのか、粘膜下の間質にも変化が及んでいるのかを検討した。腸の腺管の周囲は鞘状のpericryptal fibroblast sheath(PCFS)で覆われているが、正常の胃粘膜の腺管の周囲にはこのPCFSが存在しない。転写因子Cdx2を胃粘膜に特異的に発現させることにより腸上皮化生粘膜が誘導されるのみならず腺管周囲にPCFSが形成され、間質も胃型から腸型へ変化することが確認された。これらの一連の実験結果から転写因子Cdx2は腸粘膜上皮細胞の完全な誘導を引き起こすのみならず、腸の間質の誘導にも重要な役割を演じていることが確認された。
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