研究概要 |
トランスジェニックマウスは12週令より門脈域にリンパ球が浸潤し,48週令ではリンパ濾胞を形成した。また,24週令以降のマウスでは肝小葉に巣状壊死が観察された。免疫組織染色を行ったところ,浸潤リンパ球はCD4陰性,CD8及びHLA-DRが陽性であり,活性化CTLに相当することが判明した。また,HLA-DRの染色性はKupffer細胞でも増強しており,同様に活性化していると考えられた。血清中の抗核抗体を蛍光抗体法で評価したところ,12週令のトランスジェニックマウスは50%で陽性であり,本マウスは自己免疫性肝炎のモデルになると考えられた。 本マウスの肝組織を用いてDNA microarrayを実施したが,IFN-γなどTh1系cytokine及びIL-10などTh2系cytokineのmRNA発現は,対照マウスと差異が認められなかった。しかし,concanavalinAを静注すると,トランスジェニックマウスは対照マウスに比して広汎な肝壊死が誘発され,その際,IFN-γの血漿濃度上昇はより高度であったのに対して,IL-10濃度の上昇は軽微であった。Concanavalin-A投与後にはTh1/Th2免疫応答が破綻し,広汎肝壊死が成立すると考えられた。なお,本マウスの肝ではmetallothioneinやGSTの発現も亢進しており,この結果,四塩化炭素を投与した際に出現する肝障害は対照マウスに比して軽度となった。 なお,本トランスジェニックマウスでは病変も肝外病変も出現することが明らかとなった。脾とリンパ節は腫大し,肺,唾液腺,腎には多数のCTL浸潤が観察された。これらの臓器はC型慢性肝炎でもしばしば肝外病変が見られることから,その成立機序を検討する際にも有用なモデルになる可能性がある。
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