腸管粘膜局所免疫装置の機能を明らかにするために、病原性大腸菌を用いた腸内細菌抗原刺激に対するIgG Fc-Binding Protein (FcBP)による防御反応をin vitroの系において解析した。 まず、ウサギ下痢原性大腸菌(RDEC-1)は抗RDEC-1ウサギIgGを介してFcBPと粘液と結合することが、FcBPに対する抗体であるK9と粘液に対する抗体であるM23を用いたELISAにて証明された。また、RDEC-1と抗RDEC-1ウサギIgGとFcBPを含む10K上清を混合培養したものではRDEC-1のコロニー数はRDEC-1に非免疫ウサギIgGとFcBPを含まないバッファーのみを混合培養したものに比し著明に減少していた。同様に抗RDEC-1ウサギIgGまたはFcBPのいずれかを含む場合でも中等度にコロニー数は減少していた。ヒト病原性大腸菌(0111)と抗0111ウサギIgGとFcBPを含む10K上清を混合培養したものでも0111のコロニー数は0111に非免疫ウサギIgGとかつFcBPを含まないバッファーのみを混合培養したものに比し著明に減少し、抗0111ウサギIgGまたはFcBPのみのどちらかを含む場合でも減少した。さらに羊赤血球(SRBC)を抗羊赤血球ウサギIgG、FcBPおよびウサギ補体で反応させた時の補体による溶血はFcBPを抜いたものに比し著明に抑制された。またFcBPを5分間ボイルし失活させたもの、FcBPを先に過剰の非免疫ウサギIgGでブロックしたものでは溶血は阻止できず、FcBPを抜いたものとほぼ同程度の溶血を起こした。 以上よりムチン中に含まれるFcBPはヒトの腸管腔内に存在し、IgGを介して有害な抗原や補体による粘膜障害に対する防御機構に極めて重要な役割を果たしていることが示唆された。
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