腸管粘膜の防御機構に重要な役割を担っていると予想されるIgGFc結合蛋白の局在と特徴を解析した。モノクローナル抗体(K9)を用いた組織学的解析の結果、FcBPは大腸、小腸、胆嚢、胆嚢管、胆管、気管支、顎下腺ならびに子宮頸部の粘液産生細胞に発現していたが、眼球結膜においてはFcBPの発現は認められなかった。胃粘膜組織における検討では、腸上皮化生に隣接した肉眼的正常胃粘膜においてはHRP標識IgGとは反応せず、K9には弱陽性に染色される症例も一部に認められた。これとは対照的に、慢性胃炎における杯細胞様に分化した腸上皮化生をともなうムチン産生細胞においては、HRP-IgG、K9ともに全ての症例において強く染色された。さらにこの染色性は、腸上皮化生分類における完全型、不完全型いずれの場合においても同様であり、両者間に明らかな差は認められなかった。FcBPの結合能の解析では、大腸粘液においては約70-80kDにimmunoprecipitateされるバンドが認められ、これがactive FcBPと考えられ、normal mouse IgGの検討においては同様のバンドは認められなかった。鼻粘液、喀痰ならびに胆汁での検討でも同様にIgG結合能を有し、FcBPと同じ分子量に反応するバンドを検出した。 以上よりムチン中に含まれるFcBPは全身のムチン産生細胞を有する諸臓器に広く発現し、その粘液中において結合能を保っており、消化管のみならず外界とのバリアー機能を持つ全身の粘膜組織において防御機能を発揮していることが考えられた。
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