研究概要 |
背景 近年COX2選択的阻害剤の大腸癌のchemopriventionへの適応拡大が検討されている。しかしCOX2選択的阻害剤が、いかなる機序で抗腫瘍効果を示すのか、あるいは、COX2蛋白がmalignancyのpotentialを増強する作用のメカニズムについては十分な解明はされていない。腫瘍に発現してくるCOX2の腫瘍近傍あるいは腫瘍内に浸潤する免疫担当細胞(CTL,Mφ)への影響を調べる事、COX2 inhibitorの免疫担当細胞への影響を調べる事は、大腸腺腫やFAP、潰瘍性大腸炎を始めとする大腸癌high risk groupにおける局所の免疫機構の解明にも役立つものと思われた。目的 COX2陽性の大腸癌細胞のCytotoxic T cell Lymphocyte(CTL)の機能(FAS-FASL,TRAIL-DR系)に与える影響や、細胞障害(apoptosis)に与える影響を調べ、COX2阻害剤の抗腫瘍効果のメカニズムについても検討した。方法 COX2高発現の大腸癌細胞株(HCA 7)及び、COX2低発現の株(HCT116)をCOX2 inhibitorの存在下もしくは非存在下の状態でincubateした後、腫瘍免疫に関連した細胞死シグナル分子(FAS-FASL TRAIL-DR)の発現を調べた。同時に腫瘍免疫担当細胞としてJurkat cellとU937 cellについても腫瘍免疫関連蛋白の測定をした。COX2 inhibitor(+)もしくは(-)のmediumで大腸癌細胞株pre-incubateした後、免疫担当細胞とco-cultureし、大腸癌細胞が免疫担当細胞へ与える影響についてFACScan flow cytometerを用いて調べた。結果 数種類の大腸癌細胞株の中よりCOX2の発現が強いHCA7と発現が軽度のHCT116を実験に供した。COX2 postiveのHCA7ではFASL TRAILの発現は共に強く認められ、これらはCOX2 inhibitorにより抑制された。大腸癌細肪と免疫担当細胞のco-cultureによる細胞障害をFACScanによる検討した所COX2(+)細胞のHCA7ではCOX2 inhibitorでpre-incubationする事により大腸癌細胞による免疫担当細胞への障害が減弱している可能性が考えられた。一方COX2低発現のHCT116ではCOX2 inhibitorによる免疫細胞の細胞障害の抑制は軽度であった。考案 COX2 postive HCA7はFASL-FAS,TRAIL-DR経路により免疫担当細胞に障害を惹起し、COX2 inhibitorにより抑制される可能性が高いと考えられた。結論 COX2 inhibitorによる大腸癌細胞進展抑制のメカニズムの一つとして大腸癌細胞による免疫担当細胞障害の抑制が考えられた。
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