樹状細胞を用いた免疫治療や、サイトカイン遺伝子を用いた遺伝子治療はいずれも生体内で細胞性免疫を賦活化させることが報告されている。インターフェロン(IFN)-αは、主に腫瘍特異的な細胞障害活性を増強して抗腫瘍効果を示していた。それに対し、インターロイキン(IL)-4とIL-12は、それぞれ好中球と非特異的細胞障害活性を刺激し抗腫瘍効果を示していた。IL-4あるいはIL-12とIFN-αとを併用することで、腫瘍の発育は相加的あるいは相乗的に抑制された。樹状細胞とIFN-α遺伝子を導入した腫瘍細胞とを併用して癌治療を試みた。あらかじめ大腸癌細胞MC38野生株を接種し腫瘤を形成したマウスに、樹状細胞とIFN-α遺伝子導入MC38細胞の両者を接種したところ、樹状細胞単独治療群やIFN-α遺伝子導入MC38細胞単独治療群に比し、両者併用群では有意に野生株腫瘤の増大を抑制した。腫瘤の免疫組織学的検索では、多数の免疫細胞の浸潤が認められた。また、摘出した脾細胞を用いての細胞障害活性の検討でも強い腫瘍特異的免疫応答が認められ、樹状細胞とIFN-α遺伝子導入MC38細胞の両者併用により、生体内で強力な免疫応答が誘導されたことが証明された。また、樹状細胞とIFN-α遺伝子導入MC38細胞との融合細胞を作成し、その抗腫瘍効果を検討した。あらかじめ融合細胞を接種したすべてのマウスは、その後に野生株腫瘍細胞を接種しても腫瘤の形成は認められなかったが、樹状細胞と対照遺伝子導入腫瘍細胞との融合細胞を接種した群では、腫瘤が形成されるものが存在した。あらかじめ大腸癌細胞MC38野生株を接種し腫瘤を形成したマウスに、樹状細胞とIFN-α遺伝子導入MC38細胞の融合細胞を接種したところ、有意な治療効果も認められた。樹状細胞とIFN-α遺伝子導入MC38細胞の融合細胞は、生体内で強力に抗腫瘍免疫を誘導し、抗腫瘍効果を示すことが確認されたことから、今後臨床応用される可能性が考えられた。
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