研究概要 |
胃酸の逆流により誘起される食道の扁平上皮粘膜の変化がどのような段階を経てバレット食道・食道腺癌にいたるのかを主として分子機構に着目して解明を試みた。胃食道酸逆流症マウスモデルをバルウンにより胃食道接供奉を拡張したり、食道と胃体部とを直接吻合することで作成した。小動物においても使用可能なpHモニターを製作し、マウスのpHモニターを用いてモニタリング法の方法論を確立した。 胃食道逆流モデルマウスをコントロールマウスとともに術後50週まで飼育し、胃酸逆流の程度を検討するために数日おきにpHの変動を1日6〜12時間ずつ測定したところ、どのモデルマウスもpH4未満となる時間が測定時間の20〜60%となっていることを確認し胃食道逆流マウスモデルとした。また、2,4,6,12,30,40,50週の7つのポイントで食道粘膜を摘出し病理組織学的解析を行ったところ、2週目からすでに炎症細胞浸潤、腺上皮細胞の配列の乱れ、一部ではあるが腺管の変化などを認めた。12週以後に摘出され、上皮の異形を認めたサンプルでRNAを抽出し、differential display法、サブトラクション法、cDNA array法を用いて遺伝子発現の差異の有無をコントロールマウスの食道粘膜の場合と比較したところ24検体のうち7検体で遺伝子発現の差異を検出した。
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