研究概要 |
胃癌とりわけ分化型胃癌は,Helicobacter pylori (H. pylori)感染による慢性活動性胃炎の持続により萎縮性胃炎から腸上皮化生や腺腫を経て癌化すると推測されている。近年大腸癌ばかりでなく,胃においても前癌状態と考えられる腸上皮化生や腺腫および胃癌組織においてCOX-2が強く発現していることがいくつか報告され,我々も確認している。胃痛も大腸癌と同様に,その発生過程においてCOX-2が関与している可能性が極めて高い。そこで今回,H. pylori感染をともなうヒト胃腺腫患者に対し,H. pylori除菌療法を行い,胃腺腫の内視鏡的,組織学的変化を検討することにより,胃腺腫におけるCOX-2発現が,癌化,増殖およびアポトーシスに果たす役割を明らかにすることを目的とする。 上部消化管内視鏡検査によりH. pylori感染をともなう胃腺腫と診断された患者に対し,十分な同意を得た上で、除菌療法を施行。投与終了後内視鏡検査を再度行い,腺腫の大きさおよび形状を治療前の内視鏡所見と比較検討する。さらに,炎症性細胞浸潤,H. pylori菌量,増殖,アポトーシス,形質(胃型,腸型,混合型)および異形度や癌化について検討するために,治療前後における組織標本から,HEおよびギムザ染色,Ki67 Labeling index, TUNEL法,HGM, pS2,CDXI, COX-2など免疫組織学的検討を行う。また治療前後において,血清ガストリン(RIA),ペプシノーゲン(RIA)およびH. pylori IgG(ELISA)を比較する。 胃腺腫は、除菌後縮小傾向を認める。隆起が低くなるため、周囲粘膜との境界が不明瞭となるが組織学的には腺腫成分は消失することはない。除菌前、COX-2は腺腫内の間質に陽性細胞を認め、時間経過とともに減少傾向を示す。
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