研究概要 |
【目的】脂肪細胞から分泌されるレプチンは食欲を抑制する。一方、視床下部で産生されるオレキシンは食欲を亢進させる。睡眠・覚醒と深い関わりを持つこれら2つのペプチドは共に心・循環系や交感神経系の調節に重要な役割を担っていることが最近明らかになったが、呼吸調節系や呼吸の化学感受性に与える影響については不明である。本研究ではこれら2つのペプチドの安静換気や高炭酸ガス換気応答に与える影響について検討した。 【方法】Zuckerラットの肥満群(平均体重770g)と正常発育群(平均体重450g)用い、あらかじめ側脳室内に留置したポリエチレン・カテーテルを介して、レプチン、オレキシンまたは人工脳脊髄液(CSF)を注入する。ポデイプレチスモグラフ法で換気諸量を、吸入気と排出気のO_2濃度差から酸素消費量を求めた。高炭酸ガス換気応答(HCVR)は9%CO_2ガスを2分間吸入して測定した。 【結果】正常発育群において、レプチンは安静分時換気量と酸素消費量を増加させたが、HCVRには影響を与えなかった。一方、オレキシンの投与は安静分時換気量,酸素消費量を増加させ、かつ、HCVRを増大させた。肥満群においてもレプチン・オレキシンは同様の反応を呈したが、正常発育群に比べるとその反応性は小さかった。 【考察】レプチンは代謝を活性化することにより換気を増大させるが、オレキシンは直接的に呼吸を刺激する作用を有し,呼吸の中枢化学感受性にも影響を与える可能性が示唆された。また、これらの作用はレプチン受容体を介することなく発揮されることが明らかとなった。食欲・肥満と深い関連を持つこれらペプチドの呼吸との密接な関係が明らかとなり、肥満・肺胞低換気症候群や睡眠時無呼吸症候群の病態のさらなる解明が期待される。
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