ライノウイルス感染による気管支喘息急性増悪の機序を明らかにするために、1)培養ヒト気管上皮細胞と気管粘膜下腺細胞のムチン蛋白合成を調べた。2)好酸球活性化に対する効果を調べた。3)気道ウイルス感染による二次性細菌性気管支肺炎の機序を明らかにするため、気道上皮細胞に対する肺炎球菌の接着数を調べた。4)マクロライド抗生物質のライノウイルス感染抑制効果を調べた。成果は以下のとおりであった。1)培養ヒト気管上皮細胞はライノウイルス感染後MUC5ACを含む6種類のムチン遺伝子発現と培養液MUC5AC蛋白分泌量が増加した。また、培養ヒト気管粘膜下腺細胞もライノウイルス感染後MUC5ACを含む4種類のムチン遺伝子発現と培養液MUC5AC蛋白分泌量が増加した。ライノウイルスの刺激によるムチン合成を示唆した。2)ライノウイルス感染後のヒト気管粘膜下腺細胞培養上清は好酸球の遊走能を亢進した。好酸球の遊走能亢進は抗RNATES抗体および抗GM-CSF抗体で抑制され、培養液RANTESおよびGM-CSF濃度がライノウイルス感染後増加したことから、RANTESおよびGM-CSFの好酸球活性化作用が示唆された。3)ライノウイルス感染は培養ヒト気管上皮細胞における肺炎球菌の接着数を増加した。肺炎球菌の感染受容体である血小板活性化因子受容体を増加し、血小板活性化因子受容体阻害薬が肺炎球菌の接着を抑制したことより、ライノウイルス感染が肺炎球菌感染を誘導し、二次性細菌性気管支肺炎に関与する可能性が示唆された。4)エリスロマイシンはヒト気管上皮細胞の培養液のライノウイルス放出、細胞内ライノウイルスRNAおよび炎症性サイトカイン合成を抑制した。ライノウイルス感染受容体である細胞接着分子ICAM-1の合成抑制およびライノウイルスRNAの放出部位である酸性エンドゾーム数の減少を介してライノウイルス感染を抑制することが明らかになった。エリスロマイシンのライノウイルス感染抑制効果および気道炎症抑制効果が示唆された。
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