Bone Morphogeneitic Protein (BMP)は肺動脈平滑筋の増殖を抑制し、BMPレセプター(BMPR)の変異は家族性肺高血圧症の原因である。本研究は、膠原病肺高血圧症の患者にBMPRIIに対する自己抗体が存在し、さらに抗BMPRII抗体が肺高血圧症の発症へ関与するか否かを検討した。 抗BMPRII抗体は、BMPRII transfectantを作成し、Flow-cytometryを用い、抗BMPRII抗体を検出した。健常人(n=18)、肺高血圧症を合併しない膠原病間患者(n=30)では抗BMPRII抗体は検出されなかったが、肺高血圧症を合併した膠原病患者12名中4名(33%)に抗BMPRII抗体が検出された。 ステロイド治療に反応した膠原病合併肺高血圧症では、抗BMPRII抗体の力価は肺動脈圧と平行した推移を示した。ステロイド治療により抗BMPRII抗体が低下しなかった患者では肺動脈圧の低下は認められなかった。さらに、1症例では肺高血圧症発症直前の血清に抗BMPRII抗体が検出された。 抗BMPRII抗体の肺高血圧症発症への関与を明らかにするために、抗BMPRII抗体の肺動脈平滑筋細胞増殖への影響を検討した。患者血清のBMP-4による肺動脈平滑筋細胞増殖抑制効果に及ぼす効果を検討した。BMP-4は肺動脈平滑筋細胞増殖を抑制したが、抗BMPRII抗体陽性患者血清の添加はBMP-4による肺動脈平滑筋細胞増殖抑制効果を阻害した。 本研究は、抗BMPRII自己抗体は肺高血圧症を合併する膠原病患者特異的に存在し、その力価の変動と肺動脈圧が関連することを明らかにし、抗BMPRII抗体は膠原病合併肺高血圧症の有用な標識抗体となることを示した。さらに、本自己抗体はBMP作用抑制抗体として働き、BMPによる肺動脈平滑筋細胞増殖抑制効果を中和することにより肺動脈平滑筋細胞増殖を促進し、肺高血圧症発症に関与する可能性を明らかにした。
|