研究概要 |
昨年度に引き続き、気道リモデリングにおいて重要性が指摘されている成長因子TGFbeta-1およびTh2タイプのサイトカイン(IL-4,IL-13)の筋線維芽細胞の分化と増殖への影響を検討した。その結果、TGFbeta-1、IL-4,IL-13の線維芽細胞の筋線維穿細胞への分化は、主にストレス応答性キナーゼの一種であるJun-N-terminal kinase(JNK)のリン酸化を介する事が判明した。なお、この分化誘導に対して、喘息の治療薬の効果を検討したところ、副腎皮質ステロイドはやや弱く、ロイコトリエン受容体桔抗薬は中等度に抑制傾向を示したが、ばらつきが大きく、結論を出す為にはさらなる検討が必要と思われた。IL-4,IL-13によるヒト正常気道線維芽細胞の増殖は、副腎皮質ステロイド及び、ロイコトリエン受容体拮抗薬により有意に抑制された。一方、TGFβ-1やインターフェロンγはHGFによる上皮細胞の増殖を抑制したが、Erkのリン酸化にも細胞増殖周期で重要なcyclin D1の発現にも影響を示さなかった。しかし、HGFの存在下で、cyclin-dependent kinaseの重要なinhibitorであるp27kip1を誘導した。 喘息における気道リモデリング、とくに末梢気道における気道の改変は、不可逆的な気道閉塞を招来し、福腎皮質ステロイド療法によっても回復が困難である。基底膜下に増生する筋線維芽細胞は、本来は正常の創傷治癒に重要であり、創傷治癒が進むにつれ通常はアポトーシによって排除される。気管支喘息でのリモデリングでは、これらのプロセスに障害があり、筋線維芽細胞の持続的な増殖や活性化が起こっているかもしれない。したがって、以上の過程における細胞内シグナルを解明することは、リモデリングの予防や治療に新しい道を開くものと期待される。
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