研究概要 |
我々はヒト悪性胸膜中皮腫由来の細胞株NCI-H28における新規3p21ホモザイガス欠失を以前報告した。この新規ホモザイガス欠失の切断点をクローニングし、さらにGenbank検索、EST検索、RT-PCR法を用いホモザイガス欠失領域内に存在する新規遺伝子(MTSK1)を同定した。MTSK1はNCI-H28株において3'側のエクソン6個の欠失をきたしており、mRNA発現が見られないことを明らかにした。予想されるopen reading frameは1275アミノ酸であった。ノーザンブロット解析によりmRNAサイズは約4.7kbと1.4kbであり、正常組織では精巣に特異的に高発現していることが明らかにされた。MTSK1遺伝子の悪性胸膜中皮腫および肺癌における変異解析をSSCP法およびシークエンシング法を用いて行ったところ幾つかのsingle nucleotide polymorphism(SNP)が検出された。現在cDNA発現ベクターを構築中であり、また、オリゴペプチドを作成し、ポリクローナル抗体を作成中である。また肺癌手術標本を用いp53アポトーシスカスケードにおける主要癌関連遺伝子(p14^<ARF>,MDM2,p53,Bax, Bcl2)の異常について変異および発現解析を行い、高頻度の異常を明らかにした。さらにKRAS遺伝子の変異解析を行い、KRAS遺伝子の変異が存在する検体において染色体12番領域(KRASが存在)のHeterozygosityを検討した。その結果、ヒト肺癌においては正常KRASが欠失する頻度は低く、正常KRASに比べ変異KRAS遺伝子が過剰発現することが重要であることが明らかになった。
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