研究概要 |
平成14年度研究計画に従って以下の要領で癌抑制遺伝子、癌遺伝子に対する血清抗体の検出系を構築した。PGEX-3XベクターにL-Myc(exonII, wxonIII),c-Myc(exoII, exonIII),各種Rb mutant, p16全長を組み込んだ後、大腸菌でGST融合蛋白を産生させ、グルタチオンビーズにて精製した。またRb蛋白については患者血清中の自己抗体の癌遺伝子産物に対する認識部位を明らかにするために、合成オリゴヌクレオチドを用いたPCR法により各種のミュータントを作成した。この各種ミュータントからも同様に大腸菌を用いてGST融合蛋白を産生させた。肺癌検診受診者を対象とした大規模調査の準備として、まず研究に同意を得られた健常成人(30人)と肺癌患者(45人:小細胞癌 15人、非小細胞癌30人)を対象にして、上記システムの有用性を検討した。その結果、健常成人の血清中にはRb蛋白のどの部位に対しても自己抗体は存在しなかったが、小細胞癌の13.3%、非小細胞癌の13.3%にRb蛋白に対する自己抗体を検出した。Rbミュータントを用いたRb蛋白のどの部位を自己抗体が認識しているかの検討において、小細胞癌では全例がE1A結合部位を、非小細胞癌では半数がE1A結合部位を、残りはRb蛋白のN末端とC末端を認識しているという新しい知見を得た。以上の結果より我々の患者血清からの抗体検出系の有用性が検証されたため、平成15年度に鳥取県肺癌検診受診者を対象とした大規模調査を行うため各方面との交渉を行った。具体的には、肺癌検診の実施主体である市長村からの実施同意を得るための調整を行い、現在も進行中である。また、対象者に検診会場にて手渡す予定の説明文書を作成した。この文書においてはプライバシーが厳守されること一般検診の採血の残りを使用するので新たに採血する必要はないことなどを十分に説明してある。
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