研究概要 |
最近の臨床試験の結果から、進行非小細胞肺癌に対し、パクリタキセル(TAX)、カルボプラチン(CBDCA)の併用療法を標準的治療の一つとされている。CBDCAの投与量制限毒性(dose-limiting toxicity ; DLT)は血小板減少症であるが、TAXとの併用療法において、軽減されることが報告されている。そこで、肺非小細胞肺癌を対象としTAXおよびCBDCAの最大耐用量を推定し、併用時の臨床薬理学的ならびに分子薬理学的検討を行い、血小板減少症とTPO(Thrombopoietin)の血中動態について検討する目的でCBDCAとTAXによる併用化学療法の第I相臨床試験を行った。CBDCAのAUCは6とし、TAXをstep1から順に180、200、210、225mg/m^2と増量した。CBDCAの採血は投与開始後0.5、1、3、8、16、24時間で行い、TPO採血は1、4、8,12,15,19日で行った。計13例で検討し、grade3以上の白血球および好中球減少は認めたがDLTには至らなかった。grade3以上の貧血および血小板減少は認めなかった。非血液毒性は、筋肉痛、末梢神経障害の頻度が高く、その他のgrade3以上の非血液毒性は認めなかった。CBDCA単剤投与時に認められたTPO day8/day1と血小板nadirの負の相関はCBDCAとTAXの併用療法時においては認めなかった。CBDCAの実測AUCと血小板減少率はCBDCAとTAXの併用時にはCBDCA投与時と比較し、有意に低下した。本研究により、本併用療法の至適投与量はTAX210mg/m^2とCBDCA AUC6であることがわかった。また、CBDCA単剤投与時との比較によりTAX併用療法の血小板減少症の抑制効果が確認された。 この併用第I相試験に付随して、8例の患者でTAX投与前、投与1、6、24時間後に採血を行い、末梢血単核球からmRNAを抽出した。末梢血単核球においてTAXの代謝酵素であるチトクロームP450(CYP)アイソフォームであるCYP3A4およびCYP2C8の遺伝子発現を熊本大学にてreal-time PCR systemを用いて定量した。その結果、TAX投与前後で遺伝子発現レベルに有意な変化は認めなかった。このことから、TAXではDOCと異なり、その投与により代謝酵素が誘導されないことが明らかになった。
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