研究課題
基盤研究(C)
JAKs/STAT系,特にSTAT3の異常な活性化が悪性腫瘍の増殖に関連していることが報告されている。肝細胞癌における報告では、抑制性転写因子suppressor of cytokine signaling-1(SOCS-1)遺伝子のCpG領域のmethylationのためにSOCS-1の発現低下が起こり、結果としてSTAT3が活性化される可能性が示唆されている。つまり癌におけるSTAT3の活性化にはSOCS-1の発現低下が関与している可能性がある。本研究では肺悪性腫瘍細胞株を用いて以下のことを明らかにした。(1)我々が樹立した肺悪性腫瘍細胞株のうち、いくつかの細胞株では対数増殖期にSTAT3のリン酸化を認め、JAKs阻害薬の添加によりSTAT3の発現および細胞増殖が抑制された。(2)STAT3のリン酸化を認めた細胞株ではリン酸化を認めない細胞株と比較してSOCS-1 mRNAの発現が低下していた。(3)SOCS-1 mRNA発現が低下したいくつかの細胞株でSOCS-1遺伝子のCpG領域のmethylationを認めた。(4)SOCS-1の発現が低下した肺悪性腫瘍細胞株にアデノウイルスベクターを用いてSOCS-1遺伝子の導入を行うことにより細胞増殖が抑制された。しかしながら、SOCS-1 mRNAの発現低下を認めない細胞では、SOCS-1遺伝子の導入を行っても細胞増殖は抑制されなかった。なお、腫瘍細胞株を免疫不全マウスに移植し、形成された腫瘍組織に対して、経皮的にSOCS-1遺伝子の導入を行い腫瘍組織の増大の抑制および縮小効果につき検討を行う予定であったが、免疫不全マウスへの腫瘍の移植は難しく、in vivoでのSOCS-1遺伝子導入実験はできなかった。肺悪性腫瘍細胞株の増殖にSOCS-1遺伝子の発現低下に起因するJAKs/STAT3の活性化が関与しており、SOCS-1遺伝子の導入により、JAKs/STAT3の抑制および細胞増殖の抑制を認めることが、本研究によって明らかになった。SOCS-1遺伝子を用いた肺悪性腫瘍の遺伝子治療への応用の可能性を示唆する重要な研究と思われた。
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