(1)目的 heterogeneous nuclear ribonucleoprotein(hnRNP) B1蛋白質はRNAスプライシングやmRNAの核外輸送に関与する核内タンパク質であるが、私共はhnRNP B1の発現が、肺がんの早期から亢進していることを見いだしている。平成14年度はhnRNP B1蛋白質を肺に特異的に過剰発現するトランスジェニックマウスを作成した。本年度はトランスジェニックマウスのホモ接合体、ヘテロ接合体における肺組織の変化を経時的に解析することを目的とする。 (2)方法および結果 胎生後期から恒常的に肺胞上皮2型細胞特異的に発現する、肺サーファクタントプロテインC(SPC)遺伝子のプロモーターとhnRNP B1遺伝子のcDNAを融合させたトランスジェニックマウスを作成した。また、コントロール遺伝子としてgreen fluorescent protein(GFP)cDNAをSPCプロモーターに結合したコンストラクトを作成した。(平成14年度) これらのトランスジェニックマウスにおける導入遺伝子のコピー数の異なるストレインをそれぞれ5クローン樹立しそれぞれのクローンについてヘテロ接合体、ホモ接合体を交配によって得た。それぞれのマウスをバッククロスによって現在4系代目のマウスの解析中である。肺組織におけるhnRNP B1およびGFPの発現については免疫組織染色により確認を行った。肺組織における変化については現在ホモ接合体マウスを用いて径時的に観察中である。現在生後12ヶ月の時点での組織解析を行っている。今後肺癌の発生やブレオマイシン肺臓炎後の肺胞上皮増殖に及ぼす影響についても解析を予定している。
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