肺リンパ脈管筋腫症(LAM)のTSC遺伝子解析、胴部及び腹部〜骨盤腔CTによる画像診断、臨床経過の検討を目的として順天堂LAMレジストリーに登録し、現時点で63例が登録された。内訳は、結節性硬化症(TSC)に合併したLAM(以下、TSC-LAM)11例、TSCの臨床所見はないがLAMのみを発症した症例(以下、sporadic LAM)52例であった。sporadic LAM21例、TSC-LAM5例でTSC遺伝子解析が終了し、TSC-LAM2例でTSC2 germline mutaiton(Del993GとDel4891A)、sporadic LAM1例でTSC1 germline mutation(Cys 165(TGC→TGA)、を各々検出した。TSC-LAM5例、sporadic LAM6例の病理標本からLAM細胞をmicrodissectionしてTSC遺伝子近傍のLOHを解析すると、germline mutationが同定された3例中2例で、germline mutationのない3例で、各々LOHが検出された。つぎに、LAMに特徴的な胸部CT画像である嚢胞を低吸収域(LAA)として認識し、LAMと同様に気流制限とLAAを特徴とするCOPDと比較検討することによりLAMの病態を検討した。同程度のLAA%(-960HU以下のLAAの割合)を示すsporadic LAM5例、COPD9例の胸部CTデータを用い、LAA%(X)とLAA%(Y)との比;Df-r、-960HU以下のLAAクラスターのフラクタル次元相関係数;Circularity、-960HU以下のLAAクラスター形状の円形度(1に近いほど円形である)、を検討した。その結果、LAMのLAAクラスターは、フラクタル性に乏しく、より類円形を示し、LAAクラスター周囲の肺組織密度は正常に近い特徴があった。これは、「TSC遺伝子変異により腫瘍化したLAM細胞がクローン性増殖し、肺内に遊走・転移してLAM病変形成が進展する」、という分子遺伝学的解析結果と一致する解析結果である。
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