研究概要 |
肺リンパ脈管筋腫症(LAM)の病因や進展形式を明らかにするため、以下のような包括的研究を行った。当科LAMレジストリーに登録された90例(2004年2月29日現在)において、LAM46症例(sporadic LAM 33,TSC-LAM 13)のTSC1およびTSC2遺伝子の胚細胞遺伝子変異を検討し、sporadic LAM1例(3%)、TSC-LAM4例(31%)に病的遺伝子変異を検出した。ホルマリン固定病理組織標本(肺組織やリンパ節)からLAM細胞をマイクロディセクションし、TSC1およびTSC2遺伝子近傍の多型性マーカーを検討しLOHの有無を検討した。TSC-LAM6例中5例(83%)でTSC2マーカーにおけるLOHが検出され、sporadic LAM10例中5例でLOHが検出された(TSC1マーカー1例、TSC2マーカー2例)。LAM12例の胸部HRCT画像のLAAの形態、分布、度数をフラクタル解析し、LAMのLAAではCOPDと異なりフラクタル性がないことから、フラクタル性を有する肺構造に根ざした進展様式ではなく分子遺伝学的解析から得られた結果のように、転移により不連続生病変を形成することが示唆された。腹部CTや超音波検査を施行しえたLAM34症例のうち、腎血管筋脂肪腫9例、後腹膜腔・骨盤腔リンパ節LAM病変7例(腎血管筋脂肪腫と後腹膜腔・骨盤腔リンパ節の両方が存在するもの2症例)で検出された。肺やリンパ節のLAM病理標本をFlt4(抗VEFGR2抗体)、抗VEGF-C抗体を用いて免疫組織化学的検討を行い、LAM病変部ではリンパ管新生が顕著であり、リンパ管新生の程度はVEGF-Cの発現やLHS(LAM histologic score)と良好な相関を示すこと、従ってリンパ管新生がLAMの進展に重要である可能性を明らかにした。
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