肺気腫症の、肺胞再生を目指した再生治療にむけての第一段階として、レチノイン酸(retinoic acid : RA)により惹起される肺胞形成において発現調節を受ける遺伝子群を同定し、さらにニコチン投与が、それら遺伝子群の発現、さらには肺胞の形成に及ぼす影響を詳細に検討することを目的とし、今年度は、in vitroで、肺を構成する諸細胞の細胞株を用い、all-trans-retinoic acid (t-RA)投与により、発現調節される遺伝子群をcDNA microarray法にて同定した。細胞株として、ヒト肺線維芽細胞であるWI38、ヒト単球様細胞であるU937細胞を用い、以下のようなcDNA microarray法により検討した。培養細胞の上清中にt-RAを低濃度から高濃度まで異なった濃度で加え、t-RA刺激培養後、トータルRNAを抽出し、ランダムヘキサマープライマーと^<33>PでラベルしたdCTPを用い、逆転写酵素により、cDNAプローブを作製、つぎに、コントロールとしてt-RAの溶媒である綿実油のみを添加した細胞(無刺激)から同様の操作を行い、t-RA刺激ならびに無刺激の培養細胞から得られた2種類のcDNAプローブを用いてあらかじめ8000個以上のヒト遺伝子がオリゴヌクレオチドとして吸着されたメンブレンとハイブリダイゼイションを施行し、発現の差の認められた遺伝子群を同定したところ、複数の増殖あるいは成長因子において、t-RA刺激により発現の強弱が認められた。変化の認められた遺伝子に関しては、遺伝子特異的なプライマーを用いたsemi-quantitative PCRにより確認した。
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