研究概要 |
ラットに対し選択的β_2刺激薬であるサルブタモールを慢性暴露すると,気道上皮細胞の過剰な増殖に起因する粘膜層の肥厚が,時間依存的かつ用量依存的に観察された.このような形態学的変化,すなわち気道粘膜のリモデリングと同時に,気道上皮細胞におけるDNA合成の異常元進も認められた.また,これらの変化は,同細胞のリン酸化上皮成長因子受容体(EGFR)の遺伝子およびタンパク発現の増加を伴い,さらにEGFRリン酸化の選択的阻害薬であるAG1478の前投与によって著明に抑制された.したがって,β_2受容体刺激による気道上皮細胞増殖にはEGFRのリン酸化が必須であることが明らかとなった. さらに,培養気道上皮細胞を用いたin vitroの実験系においても,サルブタモールの添加は上皮細胞の増殖・分化を促し,同時にリン酸化EGFRの遺伝子発現,EGFRとアダプター分子(ShcおよびGrb2)の会合,ERK(extracellular-regulated protein kinase)のリン酸化などが観察された.また,かかる細胞増殖反応はDominant negative Ras mutant(AdRasY57)のトランスフェクション,選択的metalloproteinase阻害薬,HB-EGF(heparin binding EGF)阻害薬などにより抑制されたことより,蛋白分解酵素によるHB-EGFのsheddingの関与(すなわちmetalloproteinaseを介するEGFRのtransactivation)が明らかとなった.
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