研究概要 |
喫煙は肺気腫の誘因、また気管支喘息の病態の増悪因子として知られている。細胞外マトリックス分解酵素の一つであるmatrixmetalloproteinasc-9(MMP-9)は、肺組織の構造的変化を引き起こし肺気腫の病態形成に関与すると考えられている。しかし、直接、喫煙の刺激に曝されている肺上皮細胞のMMP-9産生ついては明らかでない。また、その細胞内シグナル伝達分子による制御は明らかにされていない。今回、我々はタバコ刺激による肺上皮細胞のMMP-9産生とMAPK(p38 MAPK, JNK, ERK)の制御について検討した。 方法: CSEでヒト気管上皮細胞(NCIH292)、ヒト肺胞上皮細胞(A549)を刺激し、Western blot法でMMP-9の発現及びp38 MAP kiasc, c-Jun-N-terminal kinase(JNK), extracellular signal-regulated kinase(ERK)のリン酸化を検討した。また、MTT assayで細胞毒性を検討した。N-Acetylcystein(NAC)の上記における影響も検討した。 結果 1)CSE刺激によりp38MAPKのリン酸化が認められたが、JNK, ERKのリン酸化は認められなかった。 2)CSE刺激(5,10%)によりMMP-9発現が誘導された、SB203580は発現を抑制した。 3)CSE20%以上で24時間後に顕著な細胞障害性を認めたが、SB203580は細胞死を抑制しなかった。 4)NACはp38MAPKリン酸化、MMP-9発現を発現を抑制したが、細胞死を抑制しなかった。 結論 喫煙による刺激は、活性酸素種の産生を介してp38MAPKを活性化し肺上皮細胞におけるMMP-9産生を引き起こすことで、肺気腫の病態に関与している可能性が示唆された。 本年度は、さらに、気道上皮細胞のMAPKを中心としたシグナル分子の気道炎症発生における機能を解析するために、酸化ストレス、ディーゼル排気粒子、気道ウイルス、で刺激し気道上皮細胞のMAPKの機能と病態形成の関連を研究した。
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