目的 気道平滑筋収縮は気道内腔狭窄の原動力であり、気管支喘息に多いては健常人と異なり、平滑筋の収縮のみでなく、弛緩にも変化が生じる事が報告されている。われわれは、健常人とステップ1の気管支喘息に軽度の気道攣縮を発生させ、深吸気による弛緩作用の発現と持続時間に関し明らかにする事を目的とした。 方法 健常人8名、気管支喘息患者8名を被検者とした。メサコリン吸入後、機能的残気量位における気道抵抗(ボディプレチスモグラムによる)が吸入前の2倍になるメサコリン濃度を測定した。プロトコール1:メサコリン吸入後、気道抵抗上昇を確認したのち深吸気を1回行い、その後安静呼吸を保たせ15分間気道抵抗を測定した。プロトコール2:メサコリン吸入後、15分間深吸気を禁じ、気道抵抗を測定したのち、深吸気を行わせ、さらに15分間安静呼吸を保たせ15分間気道抵抗を測定した。 結果 プロトコール1:健常人ではメサコリンによって上昇した気道抵抗は深吸気によって有意に低下した。しかし安静呼吸を保たせると(深吸気を禁じる)、5分後には元の高い気道抵抗まで上昇し以後5分間持続した。気管支喘息患者では、深吸気により気道抵抗の低下がなく、かえって上昇する傾向が見られた。プロトコール2:健常人でメサコリン吸入後15分間深安静呼吸をしたのち深吸気を行ったところ、プロトコール1と同様に気道抵抗の低下が認められたが、5分後には元の高い気道抵抗に復し以後15分間持続した。気管支喘息患者においては、15分間安静呼吸を行ったのち、深吸気を行わせると、健常人と同様に気道抵抗の低下を認めたが、5分後には元の高い気道抵抗に復し以後15分間持続した。 結論 1.メサコリン気道収縮後、深吸気による気道弛緩作用は一過性であった。 2.平滑筋の収縮(長さが短くなる)作用と、stiffness発現は異なったメカニズムで発現するものと考えられた。
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