研究概要 |
<目的> 筋萎縮性側索硬化症(Amyotrophic Lateral Sclerosis : ALS)は進行性に全身の筋萎縮と筋力低下を来たす致死性の疾患である.大部分は孤発型であるが原困不明で有効な治療法はほとんどないことから,病態解明が急務である.我々は,初期糖化産物の一種である1-Hexitol-lysine(1-HL)がALSの病変のひとつである軸索スフェロイド沈着していることを報告している.今回,更に最終糖化産物(Advanced Gycation Endoproduct : AGE)について検討を加えた. <方法> 3例の孤発性ALS患者剖検脊髄と対照群を各種AGE抗体で免疫組織染色し検討した. <結果> Carboxymethyl lysine(CML)はALS患者の残存する萎縮した脊髄前角運動ニューロンとミクログリアで陽性だった.一方,non-CML AGEはミクログリアと軸索スフェロイドに存在した.更にスフェロイドは抗SOD1杭体,抗neurofilament抗体でも染色された.患者脊髄中の非運動ニューロンや対照群では染色性は認められなかった. <考察> AGEの検索に従来CMLが多用されてきたが,近年CMLの主要な産生系路はlipid peroxidationであることが明らかとなり,AGEの評価に際してはCMLを認識しないnon-CML抗体が必要であると考えられるようになった.今回,CML, non-CML-AGEの両者が検出されたことは,酸化毒性のみならずAGEもしくは糖化反応そのものが運動ニューロン毒性に閲与していることを伺わせ意義深い.また, non-CMLはSOD-1,neurofilamentと共に存在しており,これらが糖化の基質となっている可能性が挙げられ,今後の検討すべき課題である.
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