研究概要 |
糖化をはじめとする翻訳後修飾の変化は細胞内蛋白の生理的機能を障害すると考えられる.Glioxalで処置された細胞でプロテアソームを介した蛋白分解が抑制されていることが示されている.筋萎縮性側索硬化症(ALS)では細胞質にAGE化やリン酸化を受けたユビキチン陽性蛋白の異常凝集が存在することから,翻訳後修飾の変化とユビキチンプロテアソーム系障害の間に何らかの作用があると考えられるが,どちらが上流に位置するかは異論のあるところである. そこで,現在我々はラット脊髄器官培養を用いて,プロテアソーム障害下での運動ニューロン変性過程の病態と翻訳後修飾変化に関して免疫組織染色,ウエスタンブロットなどの方法で検討を行っている.現在までの成果として (1)プロテアソーム阻害剤で処理された脊髄器官培養では,運動ニューロンが比較的特異的に変性する. (2)その過程にはニューロフィラメントのリン酸化を伴う. (3)ユビキチン化蛋白の凝集や封入体形性は見られない.海外の研究グループから,家族性ALSのモデルマウス(SOD1^<G93A>)で行った同様の研究にて凝集体が形成された報告があるが,我々の行ったSOD1^<H46R>ラット(東北大学神経内科より供与)の検討ではSOD1やユビキチン陽性の凝集体の形成は起こらない.これは,H46R変異はG93A変異に比べ分解されやすく,臨床症状においても進行が遅い特徴があり,変異蛋白の分解効率や易凝集性が細胞毒性と関連している可能性が示唆されていることに関係していると考えられる. (4)この運動ニューロン変性は細胞内Ca^<2+>キレーターで回避されることからカルシウムシグナリングの増強が関与していると考えられる.
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