研究概要 |
本年度は,皮質電気刺激による検討および臨床的検討を行った. 1.皮質電気刺激による検討. 難治性てんかんの術前評価として硬膜下電極を留置した患者4名に対し,検査について説明し同意を得た上で以下の検討を行った.パーソナルコンピューターを用いて,線分2等分検査(1本の線上に並んだ数字のうち,ちょうど中央にある数字を答える),global-local attention shift課題(小さな数字で構成された大きな数字について,大または小と指示された方の数字を答える)を行った.課題施行中に頭頂葉に皮質電気刺激を与えて,反応に変化が生じるかどうかを観察した.その結果,一名一部位において線分二等分検査で,一名一部位においてglobal-local attention shiftで誤りが認められた.したがって,左右に対する注意および局所性注意のコントロールには異なる神経ネットワークが関与していることが示唆された. 2.臨床的検討 両側頭頂葉を中心とした萎縮を呈する視覚型アルツハイマー病2名において,視覚を要する課題の質的特徴と視覚性注意の範囲について検討した.その結果,より精細な視覚的分析を要する課題ほど視覚性注意の範囲が狭くなり,同時失認の状態を呈することが明らかとなった. 以上より,認知処理レベルの差により,視覚性注意の範囲が変化することが分かった.さらに,注意機能の変換に頭頂葉が重要なはたらきをしていることが示唆された.
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