研究概要 |
本年度は,臨床的検討ならびに機能的MRIによる検討を行った. 1.認知処理レベルと視覚性注意障害 両側頭頂葉に病巣のある脳梗塞患者2名において,視覚を要する課題の質的特徴と視覚性注意について検討した.臨床的観察から同時失認が疑われたため,刺激と干渉を変えることによって視覚処理と視覚性注意の関係を明らかにすることができると考えた.患者の同意を得て,一般的な視覚認知機能検査に加えて,新たな視覚性注意課題を施行した.課題は文字,記号,模様の間にある何本かの横線の探索時間を測定するものである.その結果、記号や模様の間にある線は短時間に容易に発見できるのに対し,文字の間にある線を探すのは非常に困難であることが分かった.以上より,認知処理レベルの差により,視覚性注意の向けられる対象が変化すること,注意機能の変換に頭頂葉が重要なはたらきをしていることが示唆された. 2.言語学習課程における認知処理レベルと読字の神経基盤の変化 ハングル語の知識のない健常日本人12名において,ハングル語の単語学習に関わる大脳部位を機能的MRIを用いて検討した.ハングル語の単語20個を学習直後と2週間の学習で十分に習熟した後に,ハングル語と日本語の読みに関わる賦活領域を測定した.ハングル語単語学習直後は,日本語を読むときに左角回での賦活が有意に大きかったのに対し,習熟後は両言語での差がみられなくなった.単語学習により,ハングル語の読みに関する注意・認知処理過程に変化が生じたことが示唆された.
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