研究概要 |
本年度は,主に文字・画像処理と視覚性注意について検討を進めた. 1.皮質電極によるhigh gamma bandの検討 頭表電極によるgamma bandは認知機能に関連することが知られている.さらに,皮質電極を用いるとhigh gamma bandを捉えることが可能である.我々は絵や文字を視覚刺激とし,言語処理をする場合に,課題・部位特異的なhigh gamma bandを観察できるかどうか検討した.難治性てんかんの術前評価のため,両側側頭葉底面に硬膜下電極を留置した症例において,絵(動物・道具)および文字(漢字・かな)を刺激として事象関連high gamma bandを測定した.その結果,絵の呼称では,カテゴリーによってhigh gamma bandの分布に差が認められた.また,単語と非単語の語彙判断課題では,漢字とかなでhigh gamma bandに乖離が認められた.以上より,狭い範囲の視覚性注意を要し,高いレベルの認知処理に関連した神経活動の変化をhigh gamma bandとして捉え得ることが示唆された. 2.失読例の検討 文字を読む,絵など視覚性対象を呼称するためには,視覚性注意の適切な移動・変換が欠かせない.脳損傷によって字が読めなくなる失読症には種々のレベルでの障害がありうる.側頭後頭葉に病巣を有する失読例において,読もうとする文字種や熟知度,文字数,配置など種々の要因によって、読みの障害が影響されるかどうかを検討した.意味・形態としてまとまりの強い漢字単語は逐次読みにならずに全体として受容され,かなは一文字ずつに視覚性注意を払って読み出す傾向があった.
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