研究概要 |
本年度はパーキンソン病における運動調節機構を錐体路を下行する随意運動開始時の下行性出力として検討した.実験は研究に協力することに同意を得たパーキンソン病愚者19名と同年齢の健常成人10名を対象に倫理委員会の承認後に行った.方法としてはヒラメ筋H反射に対するMEP閾値以下の経頭蓋磁気刺激の条件刺激効果として,運動野から下行する皮質性調節を随意運動の開始時に検索した.正常では,随意運動開始時には強力な促通性出力が運動野から生じて前角細胞の興奮性が増加することがしてされているが,パーキンソン病では足間接底屈開始時にヒラメ筋前角細胞には運動野由来の抑制が観察された.これは運動の開始時に選択的に促通性出力が生じず,本来抑制されるべき拮抗筋にも非選択的に運動開始シグナルが運動野から出されていることを示唆する結果で,パーキンソン病の随意運動障害であるすくみ,寡動と関係する所見であると考えられた.この異常な抑制の程度はパーキンソン病の重症度と相関し,また,淡蒼球内節破壊術により改善することも示された.これらの結果から,今回観察された現象はパーキンソン病の病態に密接に関連した現象であると考えられた. 次年度は引き続き,この現象をさらに詳しく検討するため,運動開始時の筋電図の分析と,錘外筋を支配するアルファ運動細胞だけでなく,錘内筋を支配するガンマ運動細胞への下行性支配も検討することで,異常な運動調節機構成因を検索する.
|