研究概要 |
運動感覚野の脳情報処理能力と痴呆症を中心とした各種神経神経疾患の病態との関連について明らかにすることを目的として研究を行った。平成14年度は正常人での感覚情報処理能力を測定する手法を確立し成果を報告した(掲載論文:Hoshiyama and Kakigi,2002)。正常人ではおよそ1000Hz刺激頻度の感覚情報を中枢神経で処理可能であり、神経疾患や痴呆性疾患ではこの値に変化が認められると考えられる。また、本研究で加えて明らかになった大脳の情報処理の特徴として大脳皮質内での同時情報処理(パラレル処理)の1つひとつは異なった時間的情報処理能力を持ち、ある反応は高頻度の刺激に対応し、他の反応の時間的情報処理能力はそれほど高くないという現象が観察された。本研究により情報処理能力に関する生理的機能と異常を客観的に提示できる電気生理学的に評価が可能でありことが明らかにされた。研究成果は第32回日本臨床神経生理学会にても報告された(平成14年11月、福島市)。大脳の情報処理能力についてはより簡便な手法として時間識別覚閾値の測定や視覚閾値以下の短時間刺激による視覚誘発反応の測定を通じて研究は進められており現在論文が投稿中である。 また、早い時間情報処理に対して時間的に遅い情報伝達と中枢神経系の持続的興奮が生じる痛覚についても詳細な解析を行い(掲載論文: Tran, Inui, Hoshiyama et al., 2002, Inui, Tran, Hoshiyama et al., 2002)その時間的な情報処理特性と脳内反応部位について報告した。 平成14年度については体性感覚および視覚の情報処理能力について基礎的な成果が得られ、平成15年度に計画されている加齢変化、病態での変化の解明に向けて研究が継続されている。
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