研究概要 |
1.MAGの軸索進展阻害作用はGalNacTノックアウトマウスでは消失していた。 野生型、β1,4-N-acetyl galactosaminy transferase(以下GalNacT)及びGD3 Synthase(以下GD3S)をそれぞれノックアウト(KO)したマウスを用いてMAGの軸索進展阻害作用を比較検討した。PCRにて遺伝子型を確認した生後6から9日齢のマウスの小脳から単離した顆粒細胞を用いてneurite outgrowth assayを行った。GD3SのKOマウスでは野生型と同様の軸索進展阻害効果が観察されたが、GalNacTのKOマウスではsolubleMAGの軸索伸展阻害作用は消失した。しかし、Nogoの添加では、両KOマウスも野生型と同様に軸索進展阻害効果は保たれていた。 2.MAGの効果はRhoAの活性化と連関していた。 成長円錐のcollapseをひきおこすsmall GTPase RhoA活性について検討した。MAGによるRhoAの活性は、GD3S KOマウスでは野生型と変わらなかったが、GalNacT KOマウスでは低下していた。しかし、Nogoの添加では、両マウスとも野生型と同様に保たれていた。 3.p75NTRのlipid raftへの集積 Lipid raftへの集積をショ糖密度勾配遠心法により検討したところ、p75NTRのlipid raftへの集積は、MAG, Nogoで顆粒細胞を刺激したときに有意に増加していた。また、ガングリオシドに対する特異的なIgM抗体により、細胞を架橋した場合も同様の結果を得た。 以上より、soluble MAGはNogo receptorではなくガングリオシドを介する経路により情報伝達されると思われる。この際、MAGとNogoのシグナル伝達経路は最終的にp75NTRを共有するものの、異なる経路であることが示された。さらに、MAGはガングリオシドに結合した後、共受容体でもあり、シグナルトランスデューサーでもあるp75NTRをlipid raftへ集積させ、その下流のRhoAを活性化し、軸索伸展阻害を起こすメカニズムが示唆された。
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