神経変性疾患では、選択的細胞死と不溶性タンパクの細胞内蓄積の2点が病理学的特徴であるが、両者の関係は不明である。パーキンソン病では、ドーパミンニューロン死とLewy小体の出現が見られるが、両者の関係をプロテアソーム活性との関連に重点をおいて検討した。ミトコンドリア複合体I阻害薬として、1-methy-4-phenylpydinium ion(MPP^+)およびrotenoneを用いてプロテアソーム活性を測定した。いずれも低用量でプロテアソーム活性が増大した。ドーパミンニューロン死とプロテアソーム活性の関係を検討したところ、プロテアソーム活性が上昇する条件ではドーパミンニューロン死が促進され、活性が抑制された条件ではドーパミンニューロン死が抑制され、ミトコンドリア複合体Iの活性低下が神経細胞死を引き起こす機序の1つがプロテアソーム活性の増大であることが示された。プロテアソーム活性を抑制した条件ではドーパミンニューロン内にユビキチン陽性、αシヌクレイン陽性封入体が形成され、この点からは、封入体形成とドーパミンニューロン死はプロテアソーム活性の点からは対極的な現象である可能性が示された。一方、ドーパミン合成の律速酵素であるチロシン水酸化酵素を阻害するα-methyl tyrosineを用いて細胞内ドーパミン含有量を減らした条件ではrotenone誘発ドーパミンニューロン死が阻害されることが示された。さらに、ミトコンドリア複合体I阻害によるプロテアソーム活性の増大にはドーパミンニューロン含有ドーパミンが関与していることが推定された。
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