研究概要 |
アルツハイマー病をはじめ筋萎縮性側索硬化症(ALS)、パーキンソン病などの神経変性疾患の病態に炎症機転が重要な働きをしていることが徐々に明らかとなってきた。我々はこれらの神経変性疾患を免疫・炎症機転から、immuno-inflammatory diseaseとして捉えこれにCD40のシグナルおよびこれを制御することの予想されるCD100シグナルが関与することを検証してきた。 まず免疫補助刺激分子であるCD40は培養系において神経細胞、アストロサイト、ミクログリアに発現し、神経細胞においては分化にともない誘導されることを確認した。正常中枢神経系組織では主に神経細胞のみに発現し特に脊髄組織においては運動ニューロンに高発現が認められた。外傷モデルを作成し反応性グリアに発現誘導されることを確認した。アルツハイマー病モデルのAPPトランスジェニック(Tg)マウスの老人斑周囲の反応性グリアおよびALSモデルのSOD-Tgマウス脊髄の反応性グリアにおいてもCD40が高発現していることを確認した。培養グリア細胞をCD40刺激することによりTNF-α, iNOS, COX-2などの炎症関連分子が産生されることを確認した。さらにこれらの産生がCD100ノックアウト(KO)マウスを利用することによりCD100による調節を受けていることも明らかにした。COX-2に関しては神経細胞にも発現しているがCD40との共発現は特にグリア細胞で認められた。グリアー神経細胞混合培養系においてCD40刺激により運動神経細胞死が誘導されたがこれはCOX-2阻害剤により抑制され、さらにCD40欠失培養系では神経細胞死は認められず、正常型グリア細胞を加えた時のみに神経細胞死が誘導された。純神経細胞培養系では同様の刺激で神経細胞死は見られなかった。以上より病的状態においては反応性グリア細胞にCD40が高発現しその下流で誘導されたCOX-2を介した神経細胞死が来されていることが示唆された。
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