研究課題
基盤研究(C)
マウス生後脊髄の長期組織培養法を確立した。脊髄採取時期について、生後2日目が、4日目、8日目に比較して、運動神経細胞が、数および形態に関して、良好に保たれることを明らかにした。この系を利用し、グルタミン酸毒性に対して、抗てんかん薬として広く使われているバルプロ酸(VPA)が神経細胞死を抑制することを明らかにした。さらにSOD1マウス(G93A low copy)に投与し、発症時期はかわらないものの罹病期間を36日延長することを明らかにした。近年VPAは、抗てんかん薬としての作用以外に、Bc12、HSP70の増加、HDAC(histone deacetylase)、GSK 3βの抑制などを介した、細胞死抑制作用が、注目されている。我々は、神経変性疾患モデルにおいて、はじめてVPAの治療薬としての可能性を明らかにできた点は、当研究の大きな成果である。また、VPAは、抗てんかん薬として広く使われており、ヒトへの応用について早急に検討すべき薬剤である。マウス生後脊髄の長期組織培養法の有用性が示されたことから、さらに有効な薬剤のスクリーニングの準備が整った。増殖因子であるhepatoma-derived growth factor(HDGF)の神経系における役割を検討した。HDGFは、神経細胞核内に局在し、細胞外に分泌されること、さらに細胞外に添加すると神経栄養因子として働くこと、核内HDGFは、神経細胞の生存に深くかかわっていることを明らかにした。今後は、神経細胞の発生過程での役割、神経変性疾患などにおける病的状態における役割の解明、さらには、治療薬としての可能性が期待される。
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