研究課題
基盤研究(C)
筋萎縮性側索硬化症(ALS)の病態解明をすすめるために、ALSにおける運動ニューロン死の機序について、ALSのモデル動物である変異型ヒトSOD1(G93A)トランスジェニック(Tg)マウスを用いて解析した。その結果、G93ATgマウスにおいては低酸素刺激に対するVEGFの誘導が阻害されていることを見出した。VEGFが運動ニューロン死に関与する可能性をさらに調べるために、ラット脊髄でVEGFの受容体Flk-1の発現をブロックし、さらに低酸素曝露を加えた。その結果、運動ニューロン死が誘導されることがわかった。これらの結果から、ALSの発症にVEGFの誘導障害が関与している可能性を示唆した。神経栄養因子IGF-1によるALS治療の可能性を調べるために、G93ATgマウスの脊髄腔内にIGF-1投与してその効果をみた。IGF-1投与にてマウスの寿命は11%程度延長し、運動機能も比較的に保持された。さらに、運動ニューロン数の減少も対照に比べ約57%程度少なかった。この結果をふまえて、ALS患者へのIGF-1髄注療法治験を実施した。その結果、IGF-1髄注は安全で忍容性が高いことと、ALSによる運動機能低下をわずかながら有意に阻害することを明らかにした。ついで、神経幹細胞によるALS治療の道筋を探るために、内因性の神経幹細胞を増殖、誘導することを試みた。G93ATgマウスの脊髄腔内にEGFとFGF2を投与することによって、神経幹細胞の数を増加することを観察した。これらの細胞はグリア細胞に分化するものが多かった。この結果から、内因性の神経幹細胞を誘導することによって運動ニューロン死を制御する可能性が示された。
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