神経細胞が変性する過程を異常線維構造の形成段階によって分類した。今年度は進行性核上性麻痺の神経細胞、グリア細胞内に異常リン酸化タウ蛋白が線維構造を形成する各段階に対し、ubiquitin(ub)が存在するのかどうか、細胞内伝達物質であるp62蛋白がどの段階で異常線維と共存してくるのかを免疫2重染色法、レーザー蛍光顕微鏡で観察した。Ubは数%に出現し、特に段階IIIの異常線維がしっかりと形成された段階において出現が高かった。この点は平成14年度報告したAlzheimer病と明らかに異なっていた。P62は、進行性核上性麻痺脳において異常線維構造と15-30%に共存していた。特に形成段階II-IIIに強く共存しており、形成初期よりも中期、熟成段階に共存している。P62蛋白は筋萎縮性側索硬化症神経細胞内に出現するub化封入体と共存していた。更に、オリゴデンドログリア内に異常線維構造を形成している事が解った。脊髄前角周囲白質に分布しており、異常線維構造の新規発見と考えられた。これらには嗜銀性は観察されず、従来の染色法では同定できない。今後、筋萎縮性側索硬化症におけるp62の線維形成の解明が必要と考えられた。認知症を伴う筋萎縮性側索硬化症の大脳では、前頭葉特に脳梁を中心に分布している事が解った。認知症を伴う筋萎縮性側索硬化症の大脳変性と関連した所見と考えられる。また、p62は多系統萎縮症に出現するglial cytoplasmic inclusion (GCI)にもα-synucleinと共存している事が解った。しかしながら、神経細胞内封入体とは共存していない。GCIの形成機序にも関与している事が解った。Parkinson病脳でも、α-synucleinはLewy小体として神経細胞内に沈着しているばかりでなく、グリア細胞にも異常線維を形成して沈着している。P62はLewy小体のhaloに共存しているが、むしろ、オリゴデンドログリアに高頻度に異常沈着していることが解った。これらの異常線維の形成過程に関する検討は、神経細胞の変性とどのように関連しているのかどうかも含めて今後より詳細な検討が必要である。GCIに関連した蛋白質としてα-synucleinの分解酵素となりうるserine protease活性をもったkallikurein 6が共存している事も明らかにできた。さらに、heparansulfate proteiglycanも共存している事が解った。只、GCIの形成段階を定義づけることはより詳細な検討が必要であり、それらの蛋白がGCIの形成にどのように関わっているのかを解明する必要がある.
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