研究課題/領域番号 |
14570605
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
池添 浩二 九州大学, 医学部附属病院, 助手 (80343317)
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研究分担者 |
武田 伸一 国立精神神経センター, 神経研究所・遺伝子疾患治療研究部, 部長 (90171644)
川尻 真和 九州大学, 医学部附属病院, 助手 (00335960)
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キーワード | ラミニン2 / メロシン / アポトーシス / 小胞体ストレス性アポトーシス / 筋小胞体 / ジスフェルリン / 筋ジストロフィー |
研究概要 |
ラミニン2欠損症の骨格筋では生後まもなく(モデル動物のラミニンα2鎖のノックアウトマウスであるdy3k/dy3kマウスでは生後9日目から10日目にかけて)広範な壊死が生じ、その後の再生の時にアポトーシスが起こることで再生が完遂されないことが筋ジストロフィー発症の原因である。この壊死過程は基底膜の主要構成成分であるラミニン2の欠損により、ジストログリカンからジストロフィンへと結合する筋細胞膜の補強が不十分となることから高カルシウム濃度の細胞外液の流入を来たし、カルシウム依存性に活性化されるカルパイン等の蛋白分解酵素が活性化されることにより生じる。したがって、この壊死過程の初期には細胞外液の流入により上昇した筋細胞内カルシウム濃度により、筋小胞体の貯蔵カルシウムに異常が生じ、これがストレスになり小胞体ストレス性アポトーシスが同時に生じていると考えられる。 そこで本年度は骨格筋の小胞体ストレス下での変化を調べるために、tubular aggregates (TAs)に注目した。TAsは筋細胞膜のイオンチャネルの異常で筋細胞内の電解質バランス、特にカルシウム異常の生じたときに生じる筋小胞体由来の異常構造である。我々はTAsを有するヒト生検筋で、小胞体ストレスに関連する各種蛋白と筋細胞膜に局在する各種蛋白の発現を、免疫組織化学とウエスタンブロットにより解析した。その結果、TAsには正常筋では筋細胞膜に局在するジスフェルリンが強発現しており、またGRP78およびGRP94等の小胞体ストレス時にシャペロンとしてその発現が増加する蛋白も強発現していることを見いだした。これらの結果は、筋細胞内でのカルシウム動態の変化は小胞体ストレスとなりうること、およびジスフェルリンは小胞体ストレスに何らかの関連を有するということである。従来ジスフェルリンはその欠損が筋ジストロフィーの原因となることは判明しているが、その機能はわかっていない蛋白である。今回の結果は筋小胞体にもジスフェルリンは発現しうることも明らかにしており、今後このジスフェルリンと筋小胞体との関連を軸にラミニン2欠損症における小胞体ストレス性アポトーシスにつき解析していくことを考えている。
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