研究概要 |
HTLV-Iに対するNK細胞不応答性のメカニズムをHTLV-I感染者(HAM)および健常者の末梢血、HTLV-I感染細胞株を使用して検討した。 1)HTLV-I感染者末梢血中NK細胞の表面抗原;フローサイトメーターを使用して、NK細胞の表面マーカーを3カラー解析した。解析した表面抗原は、CD94,CD159a(NKG2A),CD158a(EB6),CD158b(GL183),CD158e(KIRp70),CD158i(KARp50.3),CD160,CD161,CD244,CD2,CD69,CD8の12抗原で、HTLV-I感染者のNK細胞上のCD159a分子、CD160分子、CD244分子、CD2分子、CD69分子の発現が、健常者に比べ減弱していた。減弱していた分子は、NK細胞の活性化に関連している分子であり、これらの発現低下が、NK細胞不応答性に関与している可能性が示唆された。 2)HAM患者末梢リンパ球およびHTLV-I感染細胞内のPI-9分子の変化;内因性serpinのSerpin proteinase inhibitor 9 (PI-9)は、グランザイムBの内因性インヒビターである。標的細胞中のPI-9は、細胞障害性リンパ球から注ぎ込まれたグランザイムBの働きを阻害することによって、アポトーシスを抑制している。ウエスタンブロット法でPI-9分子を検討した。HAM患者末梢リンパ球は健常者末梢リンパ球に比べて、また、HTLV-I感染細胞株(HCT-1,MT2,C91/PL,Tom-1,C8166)は、非感染細胞株(Jurkat,K562)に比べて、PI-9分子の発現が増強していた。細胞がHTLV-Iに感染することによって、PI-9分子発現が増強し、細胞障害性リンパ球(NK細胞、CTL)から注ぎ込まれたグランザイムBに対してレジスタントとなっている可能性が考えられた。
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