研究概要 |
HTLV-Iに対するNK細胞不応答性のメカニズムをHTLV-I感染者(HAM)および健常者の末梢血、HTLV-I感染細胞株を使用して検討した。 1)HAM患者末梢血中のNK細胞活性とNK細胞上の表面抗原の発現;HAM患者末梢血中のNK細胞活性をCr release assayで解析した(E/T比:50,20,10)。同時に採取した末梢血からNK細胞の表面マーカーをフローサイトメーターを使用して、3カラー解析した。解析した表面抗原は、細胞傷害活性に関係のみられる各分子;CD160、CD161、CD244、CD2、CD69、NKG2D、NKp46、NKp30の8抗原である。 (結果)HAM患者(10例)末梢血中のNK細胞活性は、健常者(10例)に比べて、有意に減少していた。NK細胞上のCD160分子、NKp46分子、NKp30分子の発現が、健常者に比べ有意に減弱していた。減弱していた分子は、NK細胞の活性化に関連している分子であり、これらの発現低下が、NK細胞活性低下、NK細胞不応答性に関与している可能性が示唆された。 2)HTLV-I感染細胞内のPI-9分子の変化;内因性serpinのSerpin proteinase inhibitor 9(PI-9)は、グランザイムBの内因性インヒビターである。標的細胞中のPI-9は、細胞傷害性リンパ球から注ぎ込まれたグランザイムBの働きを阻害することによって、アポトーシスを抑制している。今回、ウエスタンブロット法でPI-9分子を検討した。 (結果)HTLV-I感染細胞株(MT2,C91/PL)は、非感染細胞株(Jurkat, NKL)に比べて、PI-9分子の発現が増強していた。細胞がHTLV-Iに感染することによって、PI-9分子発現が増強し、細胞傷害性リンパ球(NK細胞、CTL)から注ぎ込まれたグランザイムBに対してレジスタントとなっている可能性が考えられた。
|