研究課題/領域番号 |
14570609
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
神経内科学
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
中村 龍文 長崎大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 助教授 (00198219)
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研究分担者 |
江口 勝美 長崎大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 教授 (30128160)
調 漸 長崎大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 助教授 (40264220)
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研究期間 (年度) |
2002 – 2003
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キーワード | NK細胞 / ウイルス感染 / HTLV-I / アポトーシス |
研究概要 |
Natural killer(NK)細胞は、ウイルス感染細胞を排除するための、生体防御機構にとって重要な細胞である。生体内で生き延びるためにウイルスは、NK細胞からの攻撃をかわす様々な工夫を行う。ヒトレトロウイルスのひとつであるHuman T cell leukemia virus type I (HTLV-I)は、成人型T細胞白血病(Adult T cell leukemia ; ATL)、HTLV-I関連脊髄症(HTLV-I associated myelopathy ; HAM)を生じる。特にHAM患者においては、古くからNK細胞の活性低下、細胞数の低下が報告されてきた。本研究ではHAM患者のNK細胞不応答性に注目し、HTLV-Iがどのような手段を講じてNK細胞からの攻撃を防いでいるか検討した。 1)NK細胞上の表面分子発現とNK活性との関係の検討 NK細胞上の表面分子の検討では、CD160分子発現低下が有意にHAM患者にみられた。CD160分子は、細胞傷害に必要であり、その発現低下が、HTLV-I感染者のNK細胞活性の低下に関係している可能性が考えられた。 2)NK細胞自身のアポトーシスの検討 NK細胞自身のアポトーシスのメカニズムとして、活性化誘導細胞死(activation-induced cell death ; AICD)誘導に伴い、granzyme Bが顆粒から漏出、特異的インヒビターPI-9分子で中和できなかった過剰なgranzyme Bが、Bidを介したミトコンドリアの系を活性化する結果生じる可能性が考えられた。HTLV-I感染では、CD2のligandであるLFA-3分子の発現が増強している。これらの細胞がこのような現象を誘発し、結果的にNK細胞からの攻撃を免れている可能性が考えられた。 3)感染細胞内のserpin proteinase inhibitoi 9(PI-9)分子発現増強によるgranzyme Bの中和 HTLV-I感染細胞株のC91/PLやMT-2では、他の非感染細胞株に比べPI-9分子の発現が亢進していた。ウイルス感染によってこのPI-9分子の発現が増強すれば、HTLV-I感染細胞は、たとえNK細胞や細胞障害性T細胞(CTL ; cytotoxicT lymphocyte)から攻撃されても、注ぎ込まれたgranzyme Bを中和して死ににくくなっていると考えられた。 以上がHTLV-I感染者生体内に起こっている現象と推測され、これらが、HTLV-IのNK細胞に対するviral evasion、つまり、NK細胞不応答性につながっていると考えられた。
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